「遊んで学べ」をテーマに、学習ゲームなどの制作をしています。

ふりかえり

 ここではまず、情報共有におけるコミュニケーションの役割を見ていきましょう。そのあと、情報を共有していくプロセスで行った具体的な工夫などについて話し合っていきます。ここでは、『名前を決めるということ』『リーダーの役割』『プロジェクトモデルとの比較』の3つの論点を挙げてみます。

1.コミュニケーションの役割
  1.1.コミュニケーションの手段とは?
  1.2.ゲーム中はどのようなコミュニケーションがとられていただろうか?
  1.3.特に「ノンバーバルコミュニケーション』について考えてみる。

2.「名前を決める」ということ

3.リーダーの役割

4.プロジェクトモデルとの比較

>>>・ツナゲー振り返り要素案
慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスにて行われた「行動と社会関係」の履修者約70名の学生を対象にプレーをしてもらい、以下のような内容でアンケートをとったものをまとめてあります。興味のある方はごらん下さい。

あなたは、「つながりゲーム」のファシリテーター(進行役)をします。「つながりゲーム」のふりかえりのポイントを独自に2つ考え、その説明をそれぞれ200字程度で記しなさい。

>>>・ツナゲーアンケート集計
同大学の加藤文俊研究プロジェクト内にて、プレーをしていただいたときのアンケート結果の集計

1.コミュニケーションの役割

1.1.コミュニケーションの手段とは?
 『話す』『かく』という、「言葉」と「文字や絵」を使ったコミュニケーションをメインに、人は情報伝達を行っています。そしてこの他にも、身振り手振りや表情、その人の持つ雰囲気なども包括した『ノンバーバル(非言語)コミュニケーション』という伝達手段も存在しています。そこで私たちは、上記の3つを大まかなコミュニケーションの手段として挙げることとしました。

  「かく」ことよりも以前に「話し」ていた人間にとって、コミュニケーションを必要とする場面で、「話す」ことを禁じられることは多大なストレスとなります。このストレス状態を敢えて体験することで、日常における「話す」行為の重要さを改めて認識してもらいたいと考えました。そして、「かく」ということがどれだけ「話す」ことを補っているか、つまりは「話す」という一過性の情報伝達方法では不可能な「情報の蓄積」が、「かく」ことの重要な要素となっていることを再認識してもらいたいと考えました。

  「ノンバーバルコミュニケーション」は、話すことよりも(「言葉」を介さないコミュニケーションという意味で)より原始的でありながらも、生活環境や世代間によってだけでなく個人個人のレベルにおいてもその表現は多用です。さらに「言外の意味」を読み取らねばならない場面もあり、扱いの難しいコミュニケーション手段であると言えるでしょう。しかし、人と人との「話すだけ」「かくだけ」のコミュニケーションを、より豊かな表現にするために必須のコミュニケーション手段であることも間違いありません。これは、メールの中で「絵文字」が多用されるようになり、顔の見えるTV電話が徐々に浸透している現在の状況をふりかえってみてもよくわかるこかと思われます。 

  このゲームの中で、束縛されたコミュニケーションをとらざるを得ない状況を、敢えて体験することで、改めて日々の生活の中で「ノンバーバルコミュニケーション」が、どれだけの幅を占めているものなのかを体感してほしいのです。

1.2.ゲーム中はどのようなコミュニケーションがとられていただろうか?
※この観点でコミュニケーションをふりかえる場合、あらかじめファシリテーターがビデオで撮影していると、ゲーム後のふりかえりの導入に役立つかと思います。

  『話す』『かく』『ノンバーバル』の3つがどのような組み合わされ方をするかというと......
(a)「かくこと禁止」の場合ならば、『話す』+『ノンバーバル』
(b)「話すこと禁止」の場合ならば、『かく』+『ノンバーバル』
といったようなスタイルになるだろうことはある程度想像できます。この2つのコミュニケーションスタイルに関して考えうるゲーム中の特徴としては、(a)の場合は「はなせてしまう」気軽さから「まずはやってみよう!」という流れになり、実際にピースを動かしながら無計画にゲームを進めていく可能性が高いと予想されます。この2つの「話す」だけ「かく」だけといったコミュニケーションは、それぞれメリットとデメリットを持っているのですが、このデメリットを出来る限り少ないものとするために「ノンバーバルコミュニケーション」が出てくるのはないでしょうか。伝わりきらない部分を、視線や身振り手振りで伝えたり、作戦に関する賛否の姿勢を雰囲気で感じとることもあるでしょう。  

  これが逆に (b)の場合は、「どうやってゲームを進めていくか」から文字でのやりとりを始めなければならない。たとえば、誰がリーダーになるのか、それともリーダーは不在なのかどうかの確認も文字で行わなければなりません。そしてその段取りが終わっても、次に実際のゲームに入るまでに「どのような作戦でゲームにあたるか」を決めるやり取りを行わなければなりません。

  つまり、話すことが禁止されている場合、あらゆる可能性が考えられますが、「ゲームに取り掛かる前に、まずあらかたの作戦を紙上で練った上で、ゲームを進めるのではないだろうか」というのが我々の見解でした。(この考えの下、学会や授業で実際にプレーヤーの様子を見たり、アンケートの内容を見てみると紙に念密な作戦を練り上げてゲームに挑んでいたグループが多々見られました。) 

  以上のようなゲーム中でのコミュニケーションの流れは、ゲームをせずともある程度想像がつくが、実際にゲームを行い、どういったコミュニケーションの手段が、どういった場面においてとられ、かつ情報の伝達にどのように役立っていたかをプレイヤーには肌で実感してもらい、ファシリテーターはそれを客観的に観察してほしいと思います。

1.3.特に「ノンバーバルコミュニケーション』について考えてみる。
  以上のことを踏まえ、たとえば次のような問いについて考えてみましょう。果たして1回目と2回目において「ノンバーバルコミュニケーション」の重要度は一緒なのでしょうか? そしてなぜ、「ノンバーバルコミュニケーション」は必要なのでしょうか、その理由は? または、もし「必要が無かった」というグループ(もしくはプレイヤー)がいた場合、「なぜ必要なかったのか?」などを考えて下さい。その上で、face to faceのコミュニケーション(「話す」「かく」「ノンバーバル」の全てを含んだもの)がどれほど重要であるか、またはface to faceでないコミュニケーションの良い面と悪い面についても考えて下さい。(こちらか解答は示しません、皆さんがプレーした結果感じたことから、それぞれの答えを出してください。)

2.「名前を決める」ということ
  名前を決めることが、コミュニケーションにおいてどのような役割を果たすのでしょうか。具体的には、まず「カードに名前をつけたグループは?」と聞いてみましょう。カードに名前をつけたグループと、つけなかったグループの得点の相関関係を見たり、また名前をつけることによる作業効率の差を検討することも、この論点についてプレーヤーの「気づき」を醸成することにもつながるでしょう。カードに名前をちゃんとつけた方が、得点が多くなる傾向があるのなら、共通認識の重要性を実感として得られるかもしれません。

3.リーダーの役割
  リーダーが、どのように生まれるのか、また、どのような役割を果たすのか考えてみましょう。具体的には、「リーダーが生まれたグループは?」と聞いてみて、リーダーが生まれたグループと生まれなかったグループでの得点差の関係や、ゲームの過程を見直してみましょう。そうして、各グループ間における作業効率の差がなぜ生まれたのかを、個人やグループ間で話し合ってみましょう。また、どのようにしてリーダーが生まれたかについても着目してみましょう。

4.プロジェクトモデルとの比較
  ツナゲーのコミュニケーション学習以外の面での利用法として、コンピューター向けシステムの開発における、各種のプロジェクトモデルのゲーミング教材としての利用を提案してみます。現在、一般的なシステム開発において用いられている開発手法には、「設計→実装→テスト→稼動」という流れで、最初の段階で厳密に設計を行う「ウォーターフォールモデル」、最小限の機能を実装した雛形をまず開発し、順次必要な機能を追加していく「プロトタイプモデル」、そしてプロトタイプを発注元に提供し、そのレスポンスをもとに「完成品」めざして修正を繰り返す「スパイラルモデル」などがあります。この利用法では、「1.コミュニケーションの役割」で述べた、(a)の場合に見られる基本設計重視の姿勢をウォーターフォールモデルに当てはめるなど、プロジェクトモデルごとの実作業の流れをイメージさせるためにコミュニケーションの制限を取り入れ、それぞれのモデルごとのメリット、デメリットについて考えることを目的としたゲーミングとするとよいのではないかと考えます。

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