「遊んで学べ」をテーマに、学習ゲームなどの制作をしています。

考察

「追跡!新宿24時!!」は、我々がJOYPODとして活動する以前から、テストプレーと改良を幾度となく行ってきた物である。企画立ち上げ当初と比較すれば、ゲーム内容の精度はかなり高くなっていると思う。テストプレーの場面としては、大学の研究会・ ISAGA・JASAG・ワークショップ道場と様々なバックグラウンドの人にプレーをしてもらった。どの場においても、ほとんどの人が事前の知識なしでいきなりゲームをプレーするということもあり、なかなかルールが飲み込めず戸惑うことも最初は多かった。 しかし、どのプレーの時も参加した人は「面白い・楽しい」という反応を返してきてくれたことは素直にうれしかった。しかし、これだけ多くのテストプレーの場を得るとそれだけこのゲームのウィークポイントも見えてきた。そこで、学会などの発表の場面で気づかされたことを以下に挙げる。

●ゲームに入るまでの導入が上手くいかない。
ゲームをする上で注意するべきことは、配布資料に書いたつもりだったが、抜け落ちていることも多くさらにゲームをするときに、説明書きはあまり読まれないものだということにいまさら気付いた。

●ファシリテーター(*1)の有無
ゲームを熟知しているファシリテーターが、プレー時にいてもいなくても同様に楽しめるために、分かりやすく、使いやすい「ファシリテーターブック」を作る必要がある。
(*1「ファシリテーター」とは、会議などでの議事進行役といった意味合いがあるが、学習ゲームなどにおいてはゲームが滞りなく行われるようプレイヤーを導き、プレー後の解説や振り返りを行う人のことを言う。)

●インストラクションフェーズの必要性
事前にゲームのルールなどを説明していない場でゲームをする場合、参加者がルールをのみこむために、「仮のゲーム」をワンプレー通して行った。こうすることで、大体の人がルールを理解してくれた。これはどんなゲームでも誰しもがやっていることであるが、このワンプレーの練習をスムーズに行うためのルールブック作りが必要だと感じた。

●アイスブレイキング
はじめ、このゲームの主な目的の一つに「アイスブレイキング」を上げていた。しかし、ルールが分からずすぐさま始められないゲームが、まったく初対面の人同士の緊張したムードを解きほぐすゲームになれるのか?という疑問が浮かび上がった。これは、授業づくりネットワークの上條氏からの問題提起によるもので、以下に上條氏から紹介のあった「プロジェクトアドベンチャー」(*2)での、体験学習ゲームについての段階わけについて紹介しておく。

(1)アイスブレイキング(緊張をほぐす)
体や気持ちをほぐしていく活動
(2)ディインヒビタイザー(気持ちの上での抑制をゆるめる)
少し恥ずかしさを感じるような活動を行い、互いに笑いあうことによって、体や気持ちをより深くほぐして、グループの中に安心感を育てる。
(3)トラスト(信頼関係を築く)
体や気持ちがほぐれ、安心感が生まれてきた段階で、お互いの信頼感をより深めていく。体を支えたり、支えてもらうことによって、「信頼」を単なる言葉ではなく、相手の体の重みとして体験していく。
(4)イニシアティブ(課題を解決する)
安心感や信頼を元に、お互いが協力しあって課題を解決していく。意見を出し合い、やってみて、失敗から次の解決方法を見つけだすトライ・アンド・エラーを繰り返してみんなで課題解決に取り組む。失敗は成功の元。課題達成までの過程を大切にする。
(5)ピークエクスペリアンス(至高体験)
それまで培ってきたグループの力が一気に花開くような、一つの頂点となるような活動。達成感を大切にする。 これらは、特にグループを作ってキャンプ活動をするときなどに行われる、仲間同士の信頼度を上げて活動を活発化するゲームの過程を追ったものだが、実社会のグループワークでも同じようなフレームで、ゲームのデザインは可能だろう。  

上記のように5つの段階に分けた場合、「新宿24時」は2番目の「ディインヒビタイザー」に相当するゲームではないかと上條氏から指摘された。上條氏に指摘いただいた重要なこととして、「アイスブレイキングとは可能な限り他愛のないこと」であるべきだということであった。たとえば、それは大人数でやるじゃんけん大会などもその中に入るだろう。   このような意見を踏まえ、改めて「追跡!新宿24時!!」の主なゲームの目的として、「他己紹介」と「ロールプレイ」を据えることとした。このテーマであれば、授業などの学習の場面においても利用価値はあるとの氏からの言葉も頂いた。
(*2「PA(プロジェクトアドベンチャー)」とは、「新しい自分を発見」し、「自分をより好きになり」、「みんなと交わることの楽しさを学ぶ」ことを、体験を通して学んでいく体験学習のこと。詳細は、PAのホームページ参照のこと。)

●ワークショップの運営
実際にゲームをやるために、授業を受け持つ先生によってゲームの効果に大きな違いが出てしまわないよう、製作者(ファシリテーター)が現場に訪れて、一度ワークショップを行うというスタイルをとっても良いのではないかと考えた。そうすることで、現場と製作者との繋がりができるという効果も期待できるだろう。 このように、「追跡!新宿24時!!」にはまだまだ課題が多く残されている。このそれぞれの課題をクリアし、より楽しみやすくリデザインしたものを製作する予定である。

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